昨年、いじめが大きな社会問題として扱われたことは、いじめ被害者、いじめ自殺の遺族が長年に渡って問題を投げかけてきたこと。未履修科目の問題も、なぜかポッと湧いてきた。
そして、最近は、高校野球の特待生問題。
どれも、結果的に犠牲になっているのは子ども達なんですよね。
私立高校、高校野球に限らず、どんなスポーツにも推薦入学制度があっても、得意なスポーツが評価されることには異論を持たない私ですが、目に余る勧誘の実態、過熱する指導にまつわる体罰やしごき、いじめなどの問題があっても、いままであまり問題にされてこなかったのに、なぜいまさら・・?
いまなぜ、この時期なんだろう?将来の夢を断たれるだけではなく、大人に振り回された子ども達はこれからどうなっていくのでしょう?
太郎の事件に関わった11人のうち、4人は事件後にスポーツ推薦で高校に入学しました。主犯のYは有数な進学校へ、一般入試という形で受験しましたが推薦内定していました。しかし、高校卒業までスポーツを続けていた子は、ひとりもいません。入学して1ヶ月、3ヶ月でやめたしまった子もいます。
推薦された生徒ばかりの中では、成績が振るわなかったり、きつい練習で体を壊したり・・中退した子もいます。
事件後の3日後に推薦入試を受けた子がいたこと、学校が事件を一切問題にしなかったことを後で知った私たちは、強いショックを受けました。中学校は、事件を高校知らせることなく、予定通り推薦をしました。
事件が明るみになったのは、11人が高校生になってからです。Yの家裁送致が5月に決まり、私たちが取材を受け始めた頃から、事件を知った高校が、Yにどんな対応をしたのかを知ったのは、Yが民事裁判で証人として出廷したときです。
Yの弁護士は、Yの暴行の事実を否認していた中で、太郎の嘘の証言でYが被害を被っているということをYの証人尋問の中でいくつか取り上げました。
そのひとつ、Yが部活を続けることができなくなったことを質問しました。Yは、「新聞やTVで事件が知れて、家庭裁判所にいくときは学校を休んだりしたので、だんだんに周りの人の接し方が変わってきた。言葉ではいわないけれど、お前がやったんだろうと白い目でみる先生もいて、自分のことをわかってくれようとする先生はいなかったと感じた」と話しました。弁護士が、「部活をやめたのは、どうして?」と質問に対して、Yは暫く間をおいて「だんだん、自分の居場所が部活内になくなってきて、自分が決めてやめた」と言いました。Yは、ひどい暴行を振るった覚えはないと事実については認めず、反省している様子もみられませんでしたが、部活をやめたことだけは太郎を責めることは言いませんでした。これは、彼のプライドなのかもしれません。
一方で、Yの母親は陳述書に、事件の原因は太郎にあるというYの言い分を信じて「事件のせいで、Yはプロ選手の夢を断たれた」と、最後まで私たちを責めていました。
Yのふてくされた態度に、私は許せない気持ちでいっぱいでしたが、関わるべき責任を先送りした中学校、事件を知ってからの高校の排除的な対応を知り、怒りと失望を感じました。
中学、高校は学校の名誉だけを考えて、推薦を決めて、不都合が起きたらポイッと捨てる。
本当に、Yのことを考えていたのなら、もっと違った対応もできたのではないかと考えました。
プロやヒーローになれるのはほんの一部生徒です。成績で簡単に切り捨てられたり、部活内の体罰、しごき、いじめなどで才能を断たれたり、不祥事が明るみになると出場停止になったりと、夢を失っていく子ども達の方が多いでしょう。
高校野球特待生問題は、憲章違反に当たるからといって処分を科すだけで良いでしょうか?