真新しい制服に身を包んで、笑顔で歩いて入学式に向かう中学生の親子を見かける。
新しいスタートって、良いなあと微笑ましく思います。
でも、高校に進学できなかった太郎を見ていたとき、気持ちの上では納得していたつもりだったのに、
新入生を見てひどく動揺した自分が,心では納得できていなかったことに気づいたことがありました。
事件の翌日に、太郎から「昨日先生から、私立高校の受験料の振り込み用紙を昨日渡され、明日までに振り込むように言われている」と聞いて、初めての受験に不安を感じながら痛みに耐えている太郎の気持ちが表情から伝わってきました。私立受験は、怪我の治療に専念することを優先させるために見送りました。
そのあと自宅に同級生達が押しかけてきたことで、太郎は外出ができなくなり、毎日怯えるようになっていたので、公立高校の受験はとりあえず1年見送ることにしました。
「受験ができないと自分はどうななってしまうのか」と、不安に駆られている太郎に、来年受験ができることを話すと、とても安堵していました。
外出できないので、大学生の家庭教師に1年間勉強を教えてもらいました。翌年、公立高校の全日制を受験しましたが、不合格という結果でした。
まだ、この頃はひとりでの外出ができなかったので、合格したら通学ができるのか、学校生活は送れるのかという不安があった時期でしたので、内心は不合格でほっとしていました。高校に通いたいという太郎の希望もあって、静岡中央高校の通信制へ入学をしましたが、送り迎えでスクーリングに通うことができても、体調に無理があって半年しか通学することができませんでした。
そんなとき、偶然にある高校の入学式を終えた親子の集団を見かけて、心がギューっと痛んで、悲しくなって、同時に、太郎に暴行を振るった少年達への怒りもこみ上げてきました。自分にもどうしようもない感情が湧き上がったことに驚いて、とても複雑な思いをしたことがありました。
「これで良いんだ」「ゆっくりと行こう」と思っていたつもりだったけれど、どこかで焦る気持ちや現実を受け入れていないことに気づきました。私以上に、気にしていたのは太郎かもしれないけれど、一度だけしか太郎はそれを口に出して言わなかった。
苦い思い出も、いまは懐かしい。
きっと、子ども達も不安を抱えていることもあるでしょうけれど、期待に胸を膨らませていると思います。
新入生の皆さん、入学おめでとう