犯罪の抑止と反省に必要な連携

1999年12月に起きた、栃木リンチ殺人事件の民事裁判の地裁判決が、12日にありました。宇都宮地裁は、父光男さん(55)らが訴えた「捜査怠慢と長男の死亡の因果関係」をほぼ全面的に認めました。

2001年4月に施行された「改正少年法」の見直しにあたって、昨年、全国犯罪被害者の会「あすの会」で、少年事件の被害者・遺族の意見聴取が行われ、私と太郎も参加しました。

いくつかの意見の中に、加害者少年に関わる大人やそれぞれの機関が、少年法の目的である「少年の健全育成」に連携を取って関わっていると感じることができないことから、加害者少年が事実を認めて反省する機会がほとんど与えられていないことがわかり、被害者・遺族にとって、大きな2次被害に繋がっていることが挙げられました。

栃木の事件のように、警察は「事件にならないと動かない」と言います。そして、「反省は促すことはできるけれど、反省させる機関ではない」と言います。
少年達の家庭環境は複雑なケースがあり、子どもの非行や犯罪に向き合うことのできない保護者は少なくありません。
学校は、「警察ではないから、詳しい調査はできない。家庭の問題に踏み込むことができない」と言います。
少年院は、少年たちの「教育・生活の矯正」が目的です。

私達は、当事者となって、はじめてこのような現状を突きつけられて、わずかでも期待していた加害者の反省の言葉を聞く事もできないケースがほとんどです。ある遺族は加害者の名前も顔も知らないままであったり、加害者の親から嫌がらせを受けるケースも少なくありません。

警察から検察に送致されても、何らかの処分がくだされなければ「無罪放免」です。
法務省の平成17年版 「犯罪白書のあらまし、特集―少年非行」 によると、平成16年度の少年刑法犯検挙人員16年は19万3,076人、検察庁新規受理人員は、一般保護事件が14万3,940人 一般保護事件の終局処理人員の内訳は,保護観察2万2,257人(11.9%),少年院送致5,300人(3.3%)で、実際に有罪の処分が下された少年は少なく、家裁審判の結果、不処分9.7%、または家裁審判不開始74.2%(双方とも人数記載なし)であり、全く処分の対象にならない少年たちが多いのです。

警察に検挙されることや審判を受けること、少年院に入ることが、少年達にとっては「制裁」になっている、反省に繋がるということを言われていますが、「制裁」は罪を犯したら当然の受けるものであって、それと自分が犯した罪を受け止めて、被害者の被害を知ること、反省をして謝罪することは違うことだと思います。

厳罰化を単純に、被害者・遺族は望んではいません。
けれど、現状のままで反省している様子も伺えない、謝罪もなければ、被害者・遺族は厳罰を望むしかありません。

いろいろな専門機関があっても、連携が取れていないことを、痛切に感じます。
何人もの遺族の方にお会いして、ご両親の人柄から、生前の子どもさんの様子が伺えます。

なぜ、命を奪われなければならなかったのか?
防げる事件、救えた命もあったはず・・そう思わずには、いられません。


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この記事へのコメント
今年の1月に伊東市第15回静岡県学童保育研究集会を開いたとき、落語家の桂才賀師匠のお話を聞きました。

前日にお会いし、お話を聞いたとき、少年院の矯正職員、保護司、篤志面接委員、家裁の調査委員の連携はできないと聞きました。

縦割りなんだな~。

子どもは、その人達が連携しないといけないのにと思いました。

桂才賀氏は、篤志面接委員でボランティアで行っているそうです。

で私の乏しい知識では、被害にあった人にどうしないといけないのかということを教えているのかわかりません。

彼が書いた「子供を叱れない大人たちへ」という本をじっくり読むと答えが出てくるかもしれません。
Posted by 鍛冶屋 at 2006年04月18日 00:05
今年の1月ではなくて2月下旬でした。m(__)m
Posted by 鍛冶屋 at 2006年04月18日 00:06
いろいろな立場の人たちのお話を伺っても、子どもたちひとりひとりに向かい合っているという具体的なところが見えてきませんでした。

うちの事件の場合、家裁送致された主犯の少年に行われた家裁調査官の面談は、1年半の間に2回と聞きました。これで、何がわかるのという感じです。
保護観察中は保護司の月に1回の報告か面談だけで、あっという間に6ヶ月の保護観察は終わりです。

少年院では、被害者に謝罪の手紙を書かせるのですが、謝罪文の見本を手本にします。手紙は書くけど、少年達も自分が書いた手紙でないことがわかっているから、「被害者に読んでもらえない」と思っていることがわかりました。

いま、被害者・遺族などの当事者が講演などで話をする取り組みを広げています。講演依頼も増えてきています。

なんでもそうですが、当事者の意見を取り入れていくことは、必要だと思います。
Posted by vianca at 2006年04月18日 00:39
当事者の意見を聞くことは大切なことですね。
今の日本の仕組みは、戦前の仕組みから変わったといえ、
主人公が市民にはなっていないですね。

お上的発想が非常に多いと感じています。
司法も変わってきているとはいえ・・・。

viancaさんたちの活動は、とても重要で大切なことなのではないでしょうか。しんどいことと思いますが・・・・。
Posted by 鍛冶屋 at 2006年04月18日 07:13
皆さんのひとつ、ひとつの活動が、どれも重要なことだと思います。

以前は、声を挙げることもできなかった立場の人達が、声を挙げやすくなった社会になってきました。

「いじめられた」と声を挙げたら、15年前位には「村八分」状態になりましたが、今は理解してくれる人たちも増えて、活動することができています。

先駆者の人たちがコツコツと、頑張ってきてくれたおかげで、今私達は「村八分」にはならないで、済んでいます。
Posted by vianca at 2006年04月19日 00:35
栃木リンチ殺人事件で、
被害者のご遺族に
嫌がらせの手紙が送りつけられていることが
明らかになりました↓。
http://imadegawa.exblog.jp/1932470/

『読売新聞』以外の全国紙では、
この件は報道されておりません。

もしよろしければこちらのブログでも、
本件を取り上げていただけないでしょうか。

突然の書き込み、
大変失礼いたしました。
Posted by 今出川通信 at 2006年04月28日 03:36
>今出川通信さん

コメント、ありがとうございます。

須藤さんの判決は、全国的に報道されましたが、この記事は私は知りませんでした。

心貧しい人がいて、残念でなりません。ひっとしたら関係者かもしれませんが・・。

一度須藤さんとは、お会いしたことがありましたので、判決を知り良い結果でよかったことをお伝えするFAXを送りましたところ、電話を頂きました。1週間は、この社会的に意義の大きい判決で得たもの多くの人に知ってもらいたいと仕事を休んで、取材に応じていたそうです。
だからこそ、嫌がらせが起きるのかもしれませんね。

少し趣旨が違うかもしれませんが、私なりにブログに取り上げて見たいと思います。
Posted by vianca at 2006年04月29日 18:00
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